このたびHideharu Fukasaku Gallery Roppongiでは西谷拓磨の個展を開催します。弊廊では6年ぶりの個展です。
西谷は主に動物をモチーフにデザイン性の強いユニークな作品を発表してきましたが、今展ではこれまでとは異なるアプローチで制作した作品を紹介します。
今回、西谷は自身の中にある二面性-男性的な部分と女性的な部分に目を向け、それぞれを日本神話に登場するイザナギノミコトとイザナミノミコトに喩えます。二人が矛先で海水をかき混ぜオノゴロ島を生み出し国造りを始めたように、矛の代わりに絵筆を自身の心に突き立て、意識と無意識の間にあるイメージを形にして作家なりのオノゴロ島と八百万の神々を生み出そうと試みます。また、作品についても数年来取り組んできた絵の具を盛る作業・デザイン性を押し出した画面とは真逆の、吹き流し・たらし込み等を用いた即興性・偶然性によって生まれる絵作りを大切にしたいと述べています。
以前から自身の二面性を提示したいと考えていたという西谷。これまでの作品が「外へ向かい他と繋がろうとする作品」とするならば、今回は「内へ向かい個を築き上げる作品」といえるでしょう。外へ向かうこと・内へ向かうこと、どちらも肯定することで作家としての可能性が広がるだろうと語る西谷の意欲的な作品をご高覧ください。
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西谷拓磨(Takuma NISHIYA) 埼玉県生まれ 1999 日本デザイン専門学校 グラフィックデザイン科 卒業
■作家ステートメント 古事記によると遠いむかし日本の国が出来る前、国がまだ水に浮かぶ脂のようにどろどろと漂ってい
たころ、イザナキ神とイザナミ神の2人は天上界にいる三柱(みはしら)の神々から国づくりを命じ
られ、天沼矛(あめのぬぼこ)という矛を授けられた。
イザナキとイザナミは天浮橋(あめのうきはし)という天と地を結ぶ橋に立ち、授けられた矛を海原
に刺し下ろし海水を「こをろこをろ」とかき回して引き上げた。すると矛の先から滴り落ちる潮が積
もり重なり凝り固まってオノゴロ島が出来上がる。
そして2人はその島を拠点に国づくりを開始したという。
私はこういう神話の神秘的なエピソードが好きです。
それは想像力を高め自分なりのものへと形を変える膨らみを持つからです。
今回の展覧会では私の中にある男性的な部分と女性的な部分をイザナキとイザナミに喩え、心という
海のようなものの中に天沼矛となる絵筆を刺し下ろし私の心にどろどろと漂う意識と無意識の間にい
るイメージを形にし自分なりのオノゴロ島を築き上げ八百万の神を産み出したいと思います。
神秘的なものには偶然性が必要だと考え、たらし込みや吹き流し等の偶然性を利用した技法や即興性
も大切にしました。
私がこの数年取り組んできた絵の具を盛る作業、デザイン性の強い制作とは真逆のものとなりますが
以前から自分の二面性のどちらも提示したいという思いがありました。
外へ向かい他と繋がろうとする作品。
内へ向かい個を築き上げる作品。
そのどちらも紛れもなく私の作品です。
今回の展示は後者の作品なので人に楽しんでもらえるか分かりませんが、私自身は楽しく作業に取り
組んでいます。
わがままな作品であり展覧会なのかも知れません。
ですがどちらの自分も肯定し高める事が作家として生きる可能性を広げる事になると私は考えま
す。私の作家活動にとっては大切な展覧会となります。
多くの方に見て頂けたら幸いです。